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高層住宅はゆがんだ政策の象徴

2018年3月17日「土曜日」更新の日記

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神戸市長田区番町にある改良住宅。 高層住宅が老人のコミュニケーションを断ち切る例として紹介した住宅だが、問題はそればかりではなかった。 私たちは改良住宅と一緒に、周辺の県営住宅や公社住宅にもアンケート調査を行なったが、そこで次のような言葉を聞かされた。  高層住宅(改良住宅は12階建てで、付近ではひときわ目立つ)を望見しながら、「あそこの家賃は私たちのところより無茶苦茶に安いけど、あそこは部落やからね。まあ仕方ないね」と言う。 一方ではうらやましがりながら、一方では強い差別意識をもっているのだ。 立派な改良住宅が、部落の新しい象徴になってしまっている。 公営住宅でも同じようなことがある。 1種の子とは遊ぶな、公団の子なら遊んでもいいというように。 あるいは、2種住宅はガラが悪くてうっかり近づけないなどと平気で言う。  改良住宅の問題点は、劣悪な住環境にあった部落をそこだけよくすることにある。 部落解放逐動が強いから、同和事業につぎこむ金があるからということで、一般の勤労者の住宅はそのままにしておいて、部落だけを改善してしまう。 これが新たな差別を生む。 部落の人たちが人間らしい生活をするために住環境の改善は大切なことだが、差別意識を助長するような現在の改良住宅のあり方は、部落の人々の住生活を本質的によくしようとする発想からは出てこないものだろう。 目前の劣悪な住宅を建て替えればすむという発想でなく、どうすれば部落差別をなくせるのか、住民のコミュニティーを守れるのか、生活環境を改善できるのかを十分に考えたうえでの同和事業、住宅改良事業であらねばならないだろう。  公営二種住宅にも同じような問題がある。 東京都内のある二種住宅の約五割の世帯は生活保護をうけているという。 生活保護世帯は全国的にみれば1パーセント前後、公営住宅では10パーセント前後である。 このような状態は、低所得者用の二種住宅がすこししかないため、きわめて 低所得の人たちばかりをそこに集めたようなかたちになってしまったことを示す。  実は同じような問題が世界各地で起こってきているのだ。

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