管理人はだれ！？

2018年3月26日「月曜日」更新の日記

　これから書こうとしている話は、日本人の住居の平均的状態についてではない。 もっと深刻な、今あなたが住んでいる家にいつ襲ってくるかもしれない「住宅危機」についてである。 それは、民間借家、公共住宅、新しくローンで家を買った人、すでにローンの支払いを終えて安心している人など、すべての居住者についての問題なのである。 あなたは住宅ローンを借りているだろうか。 そしてローンの返済は順調にいっているだろうか。 この数年来、ローン返済のこげっきがふえてきた。 住宅金融公庫からお金を借り、返済が6ヵ月以上遅れると、家は差し押さえられて競売に付されたりする。 1975年度は130件、貸付残件数の0.01パーセントだったのが、1985年度には1万4888件、0.266パーセント。 この10年間に借り入れ者が倍近くになってはいるが、件数で115倍、延滞率で26.6倍という激増ぶりである。 　住宅・都市整備公団の分譲住宅を買って住んでいる人の返済はどうだろうか。 公団の分譲住宅は買いやすい。 というのも、極端な例としては頭金を約一割払えば、残金は35年までの割賦支払いが可能だからである（ただし年間の返済額は年収の4分の1を超えることができない）。 このため、より多額の頭金が必要な住宅金融公庫に比べ、返済額は収入に比して過重となる場合が多く、滞納から抵当権実行（差し押さえ）などのトラブルとなる率は高い。 1976年当時は500件であった滞納件数は、1985年には3714件と、9年間で倍7.4になった。 　最近は中古マンション市場が活況を呈していることから、割賦途中で転売する例が急増しているが、このうち返済困難から売却にいたる例も相当数含むと考えられる。 　公団の分譲住宅は民間のマンションに比べると計画的に建設され、棟と棟の間は広く、日照・採光・通風などがよく考えられている。公園、子どもの遊び場、商店なども便利にできている。 住宅の床面積も次第に広くなり、1976年度は平均72平方メートルだったのが、85年度には100平方メートル（バルコニーを半分含む）までになった。 値段も、建物の質やまわりの環境を考慮に入れると、民間マンションよりは安い。 1976年度は平均1160万円、85年度は2800万円である。 しかも頭金が少なくてすむ。これなら手が届く。 　しかし、ちょっとした事故があるとたちまち返済がゆきづまるのは、住宅金融公庫の場合と同じである。公団は、1984年から滞納対策に取り組み、①督促強化、②キメ細かい集金対策（ボーナス時優先支払い）、③訴訟対策の体制強化、などによって滞納・トラブル率圧縮の成果を上げている。 だが、根本的な問題解決にはほど遠い。 　家を買うために必要なお金は公庫や公団から借りるだけではない。 会社の共済組合や銀行からも借りる。 銀行の利子はどんどん下がり、大変借りやすくなっている。 お金が余っているから、銀行は貸し付け競争の状態にある。 日本銀行の統計によると、1985年12月現在、全国で住宅ローンを借りている者の数は1230万件、総額約60兆円に達する。 住宅ローンを支払っているのは世帯全体の41パーセント、返済額は平均月額で9万3000円である。　 これだけ多くの人が住宅ローンを借りていれば、事故発生件数は膨大な数にのぼると予想される。 仮に住宅金融公庫と同じ割合だとすると、1985年度には3万3000件近いマイホームが差し押さえの危機に瀕している計算になる。

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